噂の年下男
「マジか……」
優弥は低く言う。
「かっこいいか……」
静かにそう言うのに、なんだかとても嬉しそうな優弥。
素直に喜べばいいのに。
あたしがせっかくデートに付き合ってやろうと思ったんだから!
「それより、なんで遅れたの?
それにあたし、自動ドアの左側って言ったよね?」
気になっていたことを聞いてみた。
すると、
「……迷った。左側ってこっちだろ?」
衝撃発言。
まさか優弥、右と左の区別が付かないの?
それに迷ったって……ここ、東京でもかなり有名なデパートで、待ち合わせ場所としても有名だよ?
優弥、方向音痴だ、絶対に!!
必死で笑いを堪えるあたし。
そんなあたしに、
「悪かった、遅れて」
優弥は言う。
どうやら、あたしが怒っていると思っているらしい。
確かに遅れるとかありえないし怒っていたけど、優弥を一目見たらどうでもよくなってしまった。
本気であたしのことを考えて、地味な格好をしてきてくれたんだ。
それが嬉しい。