噂の年下男
近付く失恋の足音
空は快晴。
冷たい風があたしたちの間を吹き抜けた。
「絶好のコンディションだね」
たーくんはそう言って、偏光レンズのサングラスを下ろす。
そんなたーくん、スキーウェアもやっぱりダサい。
まるで昭和かと思うようなボコボコで真っ赤のつなぎ。
今時、天然記念物だ。
だけど、そんなの関係ない。
「紅も似合ってるよ」
「ありがとう」
あたしは、笑顔でたーくんに言った。
ダサいたーくんだけど、スキーは上手かった。
華麗にシュプールを描き、白銀の雪面を降りていく。
そんなたーくんに引けを取らないくらい、あたしもスノーボードが上手だ。
華麗なカービングターンでたーくんを追い抜いた時……
気付いてしまったんだ。
まさか、こんなところにいるはずのない奴がいることに!