噂の年下男
乗客がざわっとして、一斉に注目を浴びる。
先輩が
「失礼しました」
といい、あたしもとっさに頭を下げた。
最悪だ。
今日のフライト、地獄だ。
「そ……そんな人、知りません」
苦し紛れに言う。
「人違いじゃありませんか?」
そんなあたしの背後に忍び寄る、黒い影。
先輩はそれを見て、頰を染める。
そして、
「紅」
その声に飛び上がった。
ヤバイ……
どうしよう。
彼氏が優弥だって絶対に知られたくない。
もっと言うと、あたしの弟が蒼だってことも。
ここはシラを切るしかない!