噂の年下男
「ファーストクラスなんて荷が重いし、あの男一人のために、あたしがここにいるのはおかしいです」
「そうだわね……
でも、艶でしょ?」
先輩はあたしのことなんてどうでも良さそうで、優弥に釘付けだ。
チンピラのようなものなのに。
ダサいのに。
「あの男には、戸崎は体調が悪いとでも言っておいてください!」
あたしはそう言い放って階段を降りた。
優弥のせいで踏んだり蹴ったりだ。
きっと、すぐにあたしの噂は広まってしまう。
戸崎は碧の姉だ。
艶と付き合ってる。
……勘弁してよ。
だけど……
胸がドキドキするのはなんでだろう。
必死に、ファーストクラスの方向ばかり気にするのはなんでだろう。
それ以降、思うように仕事が出来なかった。
優弥が乗っていると思うだけで。
そして、ようやくロサンゼルスに到着し、疲れ果てたあたしはベッドに倒れこんだ。
色々考えるとアタマが痛い。
だけど、考える暇もなくて。
あたしは、深い眠りへと入っていった。