噂の年下男
「紅さん、どうっすか?
俺と……」
聞き覚えのある、低い声。
彼の声も、最近テレビで頻繁に耳にする。
あたしは改めて彼を見た。
ありえない派手派手なウェアに身を包んでいる。
なんと、赤いジャケットに黄色いパンツ。
そして、両方とも柄もの。
目がチカチカする。
そんな彼は紺の帽子を被っていたが、金髪が帽子から流れ落ちていた。
あたしは、彼のことを知っている。
だけど、そんなに派手でチャラい男、もちろん恋愛対象外だ。
あたしは彼に言っていた。
「優弥ちゃん、あんたまだまだよ。
あたしの彼氏になりたいなら、もっといい男になりなさい」
こう言うのにも訳がある。
彼は初めてあたしに会った日から、猛アプローチをかけてきた。
だけど……
そう言っておきながら、色んな女性と遊んでいることを、あたしは知っている。
彼ほど胡散臭い男はいない。
あたしの言葉に蒼が吹き出し、あたしは蒼の足を踏みつける。
ゴーグルの下で蒼の顔が歪むのが分かった。
蒼だって同類だ。
頼むから、唯ちゃんのことは大切にして欲しい!