噂の年下男
そんな中……
「紅ーッ!」
なんと、たーくんがすごい勢いで斜面を下りてくるのが見えた。
まずい、たーくんにバレてはいけない!
逃げないと。
だけど、たーくんの速度が速すぎて。
すごい雪しぶきを上げて、一瞬であたしの隣に到着した。
そして、
「紅、この人たちは?」
案の定、聞かれた。
あたしは彼らをぐるっと見回した。
スノーボードウェアに、帽子に、ゴーグルに。
どう見ても、今話題のFには見えない。
これなら上手く切り抜けられると確信した。
「あたしの弟と、友達と彼女」
適当に紹介して、さっさと去ろうと思った。
「こっちは、あたしの彼氏のたーくん」
たーくんは、彼らに向かっておどおどと頭を下げた。
良かった、バレていない。