噂の年下男
「僕、Fのクリスマスライブに行ったんです」
嬉しそうに目を輝かせる竹本さん。
「彼ら、やっぱりすごくて。
もう感動して」
「そうなんですね」
あたしは、彼の話に聞き入ってしまう。
「確かに碧はすごいと思います。
彼の演奏に、彼の歌に、日本中が虜ですから。
でも……」
「でも?」
「あの曲を作る、艶はもっとすごいと思います」
あたしの胸が、ズキンと痛む。
「あんな曲、凡人では思いつきません。
艶は天才です」
そう言う竹本さんは完全にFの世界に入ってしまっていて。
虚ろな目で宙を眺め、すごいすごいと言う。