噂の年下男
そんな中……
「は……はじめまして。
お……弟の蒼です」
律儀にも自己紹介をしてくれた蒼。
余計なお世話だ。
そして、何を思ったのか、そのゴーグルを外そうとするものだから、
スパーーーン!!
渾身の平手打ちをかましてやる。
蒼は顔を押さえてうずくまり、あたしの身体は震えていた。
蒼、馬鹿じゃない?
色々と危機感ないんだよ。
それに……
たーくんにバレるところだった。
たーくんにふられるところだった。
また、あんたのせいで失恋するところだったよ。
「やめて!
あんたのキモい顔を見ると、たーくんが驚くから!!」
あたしは捨ぜりふを吐き、急いでその場を離れた。
危なかった。
万事休すだった。
本当に侮れない、あたしの弟、蒼。
この時のあたしの瞳には、あなたなんて映っていなかった。
物語の、ただの脇役だったんだ。