噂の年下男
「大変だ、紅!!」
なんと、さっきまでおどおどしていたたーくんが、血相を変えて斜面を降りて来るではないか。
一体どうしたんだろう。
あたしの横にザザーッと雪しぶきを上げて到着したたーくんは、あり得ない言葉を吐いた。
「さっき聞いたんだけど、このゲレンデに有名人が来ているんだって!」
「え……まさか……」
あたしの声はうわずっていた。
そして、全身を冷や汗が流れ落ちる。
まさか……
まさか、じゃない。
絶対彼らだ。
たーくんに知られてはいけない、逃げなきゃ!
そう思うのに……
「AKBかな?
見に行かない?」
たーくんは興奮して、すごい勢いで斜面を滑り出した。