噂の年下男
「ちょっと……たーくん!!」
なんとか止めようと頑張った。
でも、本気のスキーの速度にあたしのボードが勝てるはずもなく。
必死でたーくんを追うしか出来ない。
どうか……
どうか、蒼のことではありませんように。
Fのことではありませんように。
滑りながら必死で祈った。
せっかくいい彼氏を見つけたのに、もう終わりとか寂しすぎる!
だけど……
あたしの願いが天に届いたのか、
「松原多恵と隆太らしいよ」
願ってもいない言葉が耳に飛び込んできた。
蒼じゃなかったんだ。
ホッとして泣きそうになる。
これは、神様の導きだよね?
たーくんとあたしは、別れてはいけないってことだよね?
……油断ほど怖いものはないのに、あたしはそう思ってしまったのだ。