噂の年下男
馬鹿蒼は去り際に、
「ねーちゃん、またね」
あたしに手を振って逃げていった。
最後の最後まであたしの恋を痛めつけるらしい。
「碧!?マジで?」
「超カッコイイ!」
悲鳴が上がる中、あたしとたーくんは突っ立っていた。
そして……
「べ……紅」
たーくんが震える声であたしに聞く。
「今の……弟なの?」
こくんと頷くあたし。
ここへ来て、嘘をつけるほど器用ではない。
すると、たーくんは泣きそうな顔をした。
「僕のこと……遊びだったんだね」
「そんなことない!!」
あたしは声を荒げていた。
こうやって、たーくんもあたしの側から離れていくんだ!
分かっていたけど、すごく切ない。
「だって、そうとしか思えないでしょ?
あんなカッコイイ弟がいるのに……
僕なんて……」
あたしの恋は、雪崩のように崩れ去った。