噂の年下男
「すみません」
女性に呼ばれ、笑顔で答える。
その女性はあたしを見て、少し頰を染めた。
「あの……」
もじもじする女性の手元には音楽雑誌。
そして、そこにはFの写真が載っていた。
彼女がどうしてもじもじしているのか、すぐに分かった。
あたしが蒼に似ているからだ。
「F、人気ですよね」
あたしは初めて、人にFの話をする。
彼女は頰を染めたまま、こくりと頷いた。
「あたし……碧のファンで……」
こんな言葉、絶対に聞きたくなかった。
……前は。
今は何だか微笑ましい。
そう思ってしまった自分に驚いた。