噂の年下男
奴のことなんて、認めたくない。
もちろん好きでもないし、興味すらない。
そう思ったのに、その音色にやられてしまった。
恐らく、Fの曲ではないのだろう。
スローテンポでどこか懐かしいようなその曲。
弦を弾くたびに、震わせるたびに、胸にずしんと染み渡る。
あたし、油断していた。
この一瞬で、こうも引きこまれてしまうなんて。
ぽかーんとして優弥を見ていた。
奴はギターを下ろし、あたしを見る。
そして、勝ち誇った顔でニヤリとした。
だから慌てて睨んでやった。
……本物だ。
優弥は本物だ。