噂の年下男






奴のことなんて、認めたくない。

もちろん好きでもないし、興味すらない。

そう思ったのに、その音色にやられてしまった。





恐らく、Fの曲ではないのだろう。

スローテンポでどこか懐かしいようなその曲。

弦を弾くたびに、震わせるたびに、胸にずしんと染み渡る。




あたし、油断していた。

この一瞬で、こうも引きこまれてしまうなんて。







ぽかーんとして優弥を見ていた。

奴はギターを下ろし、あたしを見る。

そして、勝ち誇った顔でニヤリとした。

だから慌てて睨んでやった。






……本物だ。

優弥は本物だ。




< 93 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop