噂の年下男
「蒼よりは上手い」
苦し紛れにそう言ってやる。
……とはいえ、ここ一年ほど、大学生になって家を出た蒼のギターを聞いたことがない。
それでも、優弥を家に連れてきたあの日から、蒼のギターは明らかに変わっていた。
ここ一年で、さらに進化したのだろうか。
「当然だ」
奴はふんっと鼻を鳴らす。
その自信満々な態度にやっぱりイラつく。
「だが……蒼もなかなかだ」
やっぱりそうなんだ。
「あいつはギターだけじゃねぇ。
ボーカルだ」
たかが蒼なのに。
あたしの弱い弟なのに。
優弥の言葉がやたら嬉しい。
「あいつはギターがやりたかったのに、俺がボーカルにしたから」
「なんで?」
「顔がいいから」