強引社長に捕獲されました!?
愛を込めて構ってください
とはいえ。
ことごとく場の雰囲気に瞬殺された私。
超高級なグランドホテルの広すぎる会場に、いったい何百人集まっているのだろうか。
きらびやかな世界に恍惚としている間にも、透さんのもとには、いかにもお金持ちそうな人が次々に挨拶をしに訪れる。
英語だったり日本語だったり、どちらにしてもなにを話しているのかサッパリわからず、時々腰に置かれた手に力が込められると、それが合図になって笑顔を作った。
初めて履いたヒールの高い靴にバランスが上手く取れなくて、ひたすら透さんにしがみつく。
しばらくして、背後から佐竹さんの声がした。
「社長、そろそろスピーチのほうへ」
「……わかった」
「スピーチ?」
「ごめん、ゆず。少しだけ待ってて」
「えっ」
「佐竹、ゆずになにか飲み物を。休ませてやって」
「かしこまりました」
透さんは、私をの頬を軽く撫でると足早にステージへ向かう。
お仕事だから、邪魔したくはないけれど……。
ポツンと取り残された私は心細いというか、佐竹さんの鋭い視線が怖いというか。
正直、苦手だった。
「奥様、こちらへどうぞ」
「…………私ですか?」
「……はい」
「……沢木ゆずと申します」
「申し遅れました。秘書の佐竹と申します」
「…………いや、そうではなくて」
奥様?
私はただの連れですが。
……こういう場では奥様って呼ぶのかな?
「あの……」
「シャンパンはいかがですか」
「あ、ありがとう、ございます」
綺麗なグラスに入った飲み物を受け取ると、喉の乾いていた私はコクコクと半分飲んで溜め息をついた。
「ふぅ」
「……部屋で休まれますか?」
「いっ、いいえ!大丈夫です」
「昨日の今日ですので、無理はなさらないでくださいね」
「ありがとうございます……」
あれ?
この人も私のこと、知ってるのかな。
「あの、私の素性……、えっと」
「……存じております」
「そう、ですか」
「私が調べましたので」
「えっ」
「……社長は長い間、あなたを気にかけておられました」
「……え?」
「いつか裏庭でお話されたことがあるとか」
「……あっ、あれはその、社長だって知らなくて」
「感激しておられました」
「えぇっ!?」
「それ以来あなたを見ると、気合いが入るそうですよ?」
「……へ?」
私が驚くと、佐竹さんは微笑んで自分の口もとで人差し指を立てた。
秘密、ってことだよね。
『続きまして桐谷コーポレーション代表取締役社長、桐谷透様よりーー』
「あ……」
ステージに立ち数百人を前に平然と話す透さんを見つめる。
私のこと、覚えていてくれたんだ。
それだけじゃなくて、気にかけてくれていて。
見ていてくれた……。
不思議。
あそこにいる彼は、雲の上よりももっと遠くにいるように見えるのに、なぜか心があったかい。
「仕事柄敵も多いので、あなたのような方が側にいてくだされば、私も安心です」
「……そうなんですか?」
「はい。私はお二人の幸せを一番に祈っております」
「ありがとうございます」
幸せって……、佐竹さんオーバーだなぁ。
でも透さんのことを大切に思っているのがわかる。
私はそれが嬉しかった。
スピーチが終わると、ザワザワと騒がしくなる会場。
佐竹さんは電話が入ったらしく、外へ出ていってしまう。
私、透さんのところへ行ったほうがいいのかな……。
側にいるって約束だもんね。
約束を言い訳にして、無性に彼の側にいたいと思った私は、ヨロヨロと一歩踏みだした。
ことごとく場の雰囲気に瞬殺された私。
超高級なグランドホテルの広すぎる会場に、いったい何百人集まっているのだろうか。
きらびやかな世界に恍惚としている間にも、透さんのもとには、いかにもお金持ちそうな人が次々に挨拶をしに訪れる。
英語だったり日本語だったり、どちらにしてもなにを話しているのかサッパリわからず、時々腰に置かれた手に力が込められると、それが合図になって笑顔を作った。
初めて履いたヒールの高い靴にバランスが上手く取れなくて、ひたすら透さんにしがみつく。
しばらくして、背後から佐竹さんの声がした。
「社長、そろそろスピーチのほうへ」
「……わかった」
「スピーチ?」
「ごめん、ゆず。少しだけ待ってて」
「えっ」
「佐竹、ゆずになにか飲み物を。休ませてやって」
「かしこまりました」
透さんは、私をの頬を軽く撫でると足早にステージへ向かう。
お仕事だから、邪魔したくはないけれど……。
ポツンと取り残された私は心細いというか、佐竹さんの鋭い視線が怖いというか。
正直、苦手だった。
「奥様、こちらへどうぞ」
「…………私ですか?」
「……はい」
「……沢木ゆずと申します」
「申し遅れました。秘書の佐竹と申します」
「…………いや、そうではなくて」
奥様?
私はただの連れですが。
……こういう場では奥様って呼ぶのかな?
「あの……」
「シャンパンはいかがですか」
「あ、ありがとう、ございます」
綺麗なグラスに入った飲み物を受け取ると、喉の乾いていた私はコクコクと半分飲んで溜め息をついた。
「ふぅ」
「……部屋で休まれますか?」
「いっ、いいえ!大丈夫です」
「昨日の今日ですので、無理はなさらないでくださいね」
「ありがとうございます……」
あれ?
この人も私のこと、知ってるのかな。
「あの、私の素性……、えっと」
「……存じております」
「そう、ですか」
「私が調べましたので」
「えっ」
「……社長は長い間、あなたを気にかけておられました」
「……え?」
「いつか裏庭でお話されたことがあるとか」
「……あっ、あれはその、社長だって知らなくて」
「感激しておられました」
「えぇっ!?」
「それ以来あなたを見ると、気合いが入るそうですよ?」
「……へ?」
私が驚くと、佐竹さんは微笑んで自分の口もとで人差し指を立てた。
秘密、ってことだよね。
『続きまして桐谷コーポレーション代表取締役社長、桐谷透様よりーー』
「あ……」
ステージに立ち数百人を前に平然と話す透さんを見つめる。
私のこと、覚えていてくれたんだ。
それだけじゃなくて、気にかけてくれていて。
見ていてくれた……。
不思議。
あそこにいる彼は、雲の上よりももっと遠くにいるように見えるのに、なぜか心があったかい。
「仕事柄敵も多いので、あなたのような方が側にいてくだされば、私も安心です」
「……そうなんですか?」
「はい。私はお二人の幸せを一番に祈っております」
「ありがとうございます」
幸せって……、佐竹さんオーバーだなぁ。
でも透さんのことを大切に思っているのがわかる。
私はそれが嬉しかった。
スピーチが終わると、ザワザワと騒がしくなる会場。
佐竹さんは電話が入ったらしく、外へ出ていってしまう。
私、透さんのところへ行ったほうがいいのかな……。
側にいるって約束だもんね。
約束を言い訳にして、無性に彼の側にいたいと思った私は、ヨロヨロと一歩踏みだした。