強引社長に捕獲されました!?
「いたっ!」
人の間を縫って前へ進んでいくと、すぐに周りよりも頭一つ出た透さんを見つけた。
息をのんで近づこうとして、私はその場に立ち尽くす。
そこにいた透さんは、気品のある美しい女の人達に囲まれて談笑していて、とても私が入っていけるような空気ではなかったから……。
「……っ」
住む世界の違う人だということは、わかっていたけれど。
見ていることが……、凄く辛い。
まるで王子様に憧れる灰かぶり。
声をかけることもできずに、持っていたグラスに力を込めた。
ドンッ
「きゃっ!?」
突然、誰かに押し飛ばされてよろめく。
「ちょっと気をつけてよ!」
「すみません」
って、思わず謝ったけれど。
この人からぶつかってきたような……。
「……あっ、ドレスが」
ぶつかった拍子に持っていたシャンパンが溢れて、胸もとが汚れてしまった。
私ったら、どうしようっ。
みるみるうちに染みて透けていく胸もとを両手で隠し、恥ずかしさに俯いた。
「あんた……!」
「え?」
「見たことあると思ったら、掃除のおばさんじゃない!」
「……っ!!」
この人、八つ当たりする女性社員だっ!
「やーだ、こんなところまで掃除しに来たの?」
「……私は」
「どうやって紛れ込んだわけ?」
なんて言えばいいの……。
私達の騒ぎに注目が集まってきてる。
バレたら透さんにまで恥をかかせちゃうよ。
言い訳も思いつかずに口ごもっていると、しびれを切らしたかのように私の腕を思いっきり引っ張った。
「……っ!?」
思わずバランスを崩し膝をつく。
倒れ込んだ私の目の前に、彼女の足が差し出された。
「私のパンプス、汚れちゃったわ!」
「え?」
「あなたの着ている雑巾で拭いて」
「……これはっ」
透さんが選んでくれたドレスなのに。
私が着ると、雑巾にしか見えないのかな。
そうだよね……。
昨日まで借金取りに追われて、ボロボロの服を着ていたんだもの。
ここにいる人達は、ニセモノの私とは違う。
同じになれるわけがない。
魔法にかかっただけなのに、浮かれて抱いたこの気持ち。
私、バカだな……。
シンデレラだってきっと、身分の差に引け目を感じていたに違いない。
唇を噛み締めてこらえようとしたけれど、ポロポロと涙が溢れ落ちた。
『転ぶ前に支えてあげる』
「……嘘つき」
あぁ、私。
なんで今気づくんだろう。
『社長パワーでふっ飛ばす』
「……好きになっちゃったじゃない」
こんなの惨めすぎて、売られたほうがマシだったかも。
「……っ」
「なにしてんの!さっさと拭きなさい……よ…………」
「君こそ、なにしてんの」
「っ社長、……あ、この女がっ!」
「……ふーん」
とおる、さん…………?
「ゆず」
「……ほっといてください」
見上げることもできずに蚊の鳴くような声で呟くと、上から溜め息が聞こえた。
途端にガクンと身体が揺れる。
きゃーっという悲鳴に近い声が遠くから聞こえて、やっと自分の状態を理解した。
「っ!?」
「佐竹、あとは頼む」
「……かしこまりました」
透さんは私をふわりと抱き上げ、ざわめく観衆に目もくれず堂々と会場を後にした。
人の間を縫って前へ進んでいくと、すぐに周りよりも頭一つ出た透さんを見つけた。
息をのんで近づこうとして、私はその場に立ち尽くす。
そこにいた透さんは、気品のある美しい女の人達に囲まれて談笑していて、とても私が入っていけるような空気ではなかったから……。
「……っ」
住む世界の違う人だということは、わかっていたけれど。
見ていることが……、凄く辛い。
まるで王子様に憧れる灰かぶり。
声をかけることもできずに、持っていたグラスに力を込めた。
ドンッ
「きゃっ!?」
突然、誰かに押し飛ばされてよろめく。
「ちょっと気をつけてよ!」
「すみません」
って、思わず謝ったけれど。
この人からぶつかってきたような……。
「……あっ、ドレスが」
ぶつかった拍子に持っていたシャンパンが溢れて、胸もとが汚れてしまった。
私ったら、どうしようっ。
みるみるうちに染みて透けていく胸もとを両手で隠し、恥ずかしさに俯いた。
「あんた……!」
「え?」
「見たことあると思ったら、掃除のおばさんじゃない!」
「……っ!!」
この人、八つ当たりする女性社員だっ!
「やーだ、こんなところまで掃除しに来たの?」
「……私は」
「どうやって紛れ込んだわけ?」
なんて言えばいいの……。
私達の騒ぎに注目が集まってきてる。
バレたら透さんにまで恥をかかせちゃうよ。
言い訳も思いつかずに口ごもっていると、しびれを切らしたかのように私の腕を思いっきり引っ張った。
「……っ!?」
思わずバランスを崩し膝をつく。
倒れ込んだ私の目の前に、彼女の足が差し出された。
「私のパンプス、汚れちゃったわ!」
「え?」
「あなたの着ている雑巾で拭いて」
「……これはっ」
透さんが選んでくれたドレスなのに。
私が着ると、雑巾にしか見えないのかな。
そうだよね……。
昨日まで借金取りに追われて、ボロボロの服を着ていたんだもの。
ここにいる人達は、ニセモノの私とは違う。
同じになれるわけがない。
魔法にかかっただけなのに、浮かれて抱いたこの気持ち。
私、バカだな……。
シンデレラだってきっと、身分の差に引け目を感じていたに違いない。
唇を噛み締めてこらえようとしたけれど、ポロポロと涙が溢れ落ちた。
『転ぶ前に支えてあげる』
「……嘘つき」
あぁ、私。
なんで今気づくんだろう。
『社長パワーでふっ飛ばす』
「……好きになっちゃったじゃない」
こんなの惨めすぎて、売られたほうがマシだったかも。
「……っ」
「なにしてんの!さっさと拭きなさい……よ…………」
「君こそ、なにしてんの」
「っ社長、……あ、この女がっ!」
「……ふーん」
とおる、さん…………?
「ゆず」
「……ほっといてください」
見上げることもできずに蚊の鳴くような声で呟くと、上から溜め息が聞こえた。
途端にガクンと身体が揺れる。
きゃーっという悲鳴に近い声が遠くから聞こえて、やっと自分の状態を理解した。
「っ!?」
「佐竹、あとは頼む」
「……かしこまりました」
透さんは私をふわりと抱き上げ、ざわめく観衆に目もくれず堂々と会場を後にした。