強引社長に捕獲されました!?
私、婚姻届とか書いたっけ?
ハンコを押した記憶もないんですけど。
「ところで奥さん、腹減ったよ」
「あっ、すみません」
じゃなくて。
と思いつつも夕飯をテーブルに並べてしまう私。
流されやすいというか、律儀な性格というか……。
だからこんなことになっているのか?
おいしそうに食べ始める透さんを見つめながら、それがなんだか嬉しい気持ちを隠して、なにから聞けばいいのかを悶々と考えた。
「えーと。私達、結婚したんですか?」
「そうだよ」
「……いつから?」
「捕獲した翌日に入籍しといた」
「……捕獲」
拾ってくださいの段ボール箱に入っていたり、珍獣並みに逃げ回っていたりしたわけではないのですが。
「そんな勝手に……」
「俺はちゃんと丁寧に聞いたし、無理強いしないとも言った」
「記憶にありませんっ!」
「俺の側にいて信じるって、オッケーしてくれたじゃん」
「…………え?」
それってそういうこと?
混乱していると透さんは口を尖らせて、人差し指で私の頬を突っついた。
「痛いっ」
「ゆず、俺のこと好きって言っただろ」
「だからっていきなり……」
「何事もカタチから」
「……やっぱり意味がわからないんですけど!」
「ザックリ言うと、俺が急ぎで結婚しなきゃならなくなってさ」
「……そんな簡単にっ、だったらもっと美人でお金持ちの人のほうが!」
「ゆずがいいと思ったんだよ」
そういえば、私がいいって言われた気もする。
でも普通まともに話したこともない相手と、しかも借金地獄の貧乏人と、結婚しようと思うかな。
「……身寄りもいないし、言うこと聞きそうだから?」
「なんでそうなるの」
「……だって、そもそも透さんは私のこと好きなんですか?」
「好きだよ」
「……っ」
「ゆず、顔真っ赤」
透さんは笑いながら私の頭を撫でる。
気づくと彼に撫でられるのが好きな私。
飼い慣らされてきたのだろうか。
「でも、会ったばかりなのに……」
「ゆずは忘れたかもしれないけど、初めて会ったのは大分前だし」
「…………あ」
「結婚するならお前って、直感したんだよ」
「……裏庭」
「え?」
「あっ、秘密です」
「……佐竹か」
ハッとして口もとを隠す。
確かに佐竹さんから聞いたけれど、私だって忘れたわけじゃない。
ほんとに、ずっと気に止めていてくれたって信じていいのかな。
「ねぇ。後悔させないから、俺の嫁でいて」
「お互いのこと、全然知らないのに」
「大丈夫。俺の直感を信じろ」
ずるいなぁ。
アプローチもキスも強引なのに、彼の言葉は甘ったるくて私をドキドキさせる。
鋭い眼差しに締めつけられて首を縦に振ると、透さんはごちそうさまと額に軽くキスを落とす。
そのまま煙草を掴み、ベランダへ出ていった。
「……直感、かぁ」
正直まだ複雑な気持ちを抱きつつ、それでも私は透さんの力強さに惹かれて、突然訪れた結婚の二文字に幸せな溜め息をついた。
「ゆず、こっちきて」
私がお風呂から上がると、缶ビールを片手に寝室から手招きする透さん。
ドキッとしてシャツを握り締め後ずさると、クスリと笑って近づいてきた。
「期待してる?」
「そんなんじゃ……っ!」
「その前に、ゆずにプレゼント」
「……え?」
透さんが寝室のドアを開けると、部屋の奥にちょこんと置かれた新入りが目に入る。
これ、……私のために?
アンティーク風の上品なデザインの、真っ白でお姫様みたいなドレッサー。
「かっ」
かわいいっ!
「気に入った?」
「……」
「ゆず?」
佐竹さんが運んできた荷物ってこれだったんだ……。
きっとこうしてこれからも、あなたに認められて、私の居場所が増えていく。
誰かが私を必要としてくれることが、こんなに嬉しいなんて。
「もし私が結婚を断ったら、どうするつもりだったんですか?」
「んー、俺はゆずに懸けてたから」
「なかなかのギャンブラーですね」
「よく言われる」
笑いあいながら、ドレッサーの前まで促される。
どうぞと言わんばかりに透さんが椅子を引いた。
そっと腰を下ろすと鏡に写る、幸せそうな私。
だけどーー。
「透さん、私……。綺麗な服や高級な物が欲しいわけじゃないですよ」
「え?」
「私が作ったご飯をおいしそうに食べてくれるだけで嬉しい。それが最高のプレゼントなんです」
「……」
「でも、私のこと考えてくれたんでしょ?凄く嬉しいですっ」
ありがとうの気持ちをたくさん込めて微笑むと、透さんは持っていた缶ビールをドレッサーの上にコトンと置いた。
そして突然抱え上げられ、ふかふかのベッドの上に投げられる。
「なにするんっ……」
「俺って見る目あるよなぁ」
「はぁ?」
なにやら自己満悦していた透さんが覆い被さってきて、首筋に唇を寄せて呟いた。
「俺本当、お前好きだわ」
「えっ!あ、あの!?」
「いい加減シャツ一枚でフラフラすんなよな」
「へ?」
「毎晩誘われてんのかと思ったよ」
「そんなっ」
「お礼は身体で払ってね?奥さん」
「っ!?」
意地悪くニヤリとした透さんが、瞬く間に身体中にキスを落としていく。
深まる夜に、心は甘い気持ちに満ちていった。
ハンコを押した記憶もないんですけど。
「ところで奥さん、腹減ったよ」
「あっ、すみません」
じゃなくて。
と思いつつも夕飯をテーブルに並べてしまう私。
流されやすいというか、律儀な性格というか……。
だからこんなことになっているのか?
おいしそうに食べ始める透さんを見つめながら、それがなんだか嬉しい気持ちを隠して、なにから聞けばいいのかを悶々と考えた。
「えーと。私達、結婚したんですか?」
「そうだよ」
「……いつから?」
「捕獲した翌日に入籍しといた」
「……捕獲」
拾ってくださいの段ボール箱に入っていたり、珍獣並みに逃げ回っていたりしたわけではないのですが。
「そんな勝手に……」
「俺はちゃんと丁寧に聞いたし、無理強いしないとも言った」
「記憶にありませんっ!」
「俺の側にいて信じるって、オッケーしてくれたじゃん」
「…………え?」
それってそういうこと?
混乱していると透さんは口を尖らせて、人差し指で私の頬を突っついた。
「痛いっ」
「ゆず、俺のこと好きって言っただろ」
「だからっていきなり……」
「何事もカタチから」
「……やっぱり意味がわからないんですけど!」
「ザックリ言うと、俺が急ぎで結婚しなきゃならなくなってさ」
「……そんな簡単にっ、だったらもっと美人でお金持ちの人のほうが!」
「ゆずがいいと思ったんだよ」
そういえば、私がいいって言われた気もする。
でも普通まともに話したこともない相手と、しかも借金地獄の貧乏人と、結婚しようと思うかな。
「……身寄りもいないし、言うこと聞きそうだから?」
「なんでそうなるの」
「……だって、そもそも透さんは私のこと好きなんですか?」
「好きだよ」
「……っ」
「ゆず、顔真っ赤」
透さんは笑いながら私の頭を撫でる。
気づくと彼に撫でられるのが好きな私。
飼い慣らされてきたのだろうか。
「でも、会ったばかりなのに……」
「ゆずは忘れたかもしれないけど、初めて会ったのは大分前だし」
「…………あ」
「結婚するならお前って、直感したんだよ」
「……裏庭」
「え?」
「あっ、秘密です」
「……佐竹か」
ハッとして口もとを隠す。
確かに佐竹さんから聞いたけれど、私だって忘れたわけじゃない。
ほんとに、ずっと気に止めていてくれたって信じていいのかな。
「ねぇ。後悔させないから、俺の嫁でいて」
「お互いのこと、全然知らないのに」
「大丈夫。俺の直感を信じろ」
ずるいなぁ。
アプローチもキスも強引なのに、彼の言葉は甘ったるくて私をドキドキさせる。
鋭い眼差しに締めつけられて首を縦に振ると、透さんはごちそうさまと額に軽くキスを落とす。
そのまま煙草を掴み、ベランダへ出ていった。
「……直感、かぁ」
正直まだ複雑な気持ちを抱きつつ、それでも私は透さんの力強さに惹かれて、突然訪れた結婚の二文字に幸せな溜め息をついた。
「ゆず、こっちきて」
私がお風呂から上がると、缶ビールを片手に寝室から手招きする透さん。
ドキッとしてシャツを握り締め後ずさると、クスリと笑って近づいてきた。
「期待してる?」
「そんなんじゃ……っ!」
「その前に、ゆずにプレゼント」
「……え?」
透さんが寝室のドアを開けると、部屋の奥にちょこんと置かれた新入りが目に入る。
これ、……私のために?
アンティーク風の上品なデザインの、真っ白でお姫様みたいなドレッサー。
「かっ」
かわいいっ!
「気に入った?」
「……」
「ゆず?」
佐竹さんが運んできた荷物ってこれだったんだ……。
きっとこうしてこれからも、あなたに認められて、私の居場所が増えていく。
誰かが私を必要としてくれることが、こんなに嬉しいなんて。
「もし私が結婚を断ったら、どうするつもりだったんですか?」
「んー、俺はゆずに懸けてたから」
「なかなかのギャンブラーですね」
「よく言われる」
笑いあいながら、ドレッサーの前まで促される。
どうぞと言わんばかりに透さんが椅子を引いた。
そっと腰を下ろすと鏡に写る、幸せそうな私。
だけどーー。
「透さん、私……。綺麗な服や高級な物が欲しいわけじゃないですよ」
「え?」
「私が作ったご飯をおいしそうに食べてくれるだけで嬉しい。それが最高のプレゼントなんです」
「……」
「でも、私のこと考えてくれたんでしょ?凄く嬉しいですっ」
ありがとうの気持ちをたくさん込めて微笑むと、透さんは持っていた缶ビールをドレッサーの上にコトンと置いた。
そして突然抱え上げられ、ふかふかのベッドの上に投げられる。
「なにするんっ……」
「俺って見る目あるよなぁ」
「はぁ?」
なにやら自己満悦していた透さんが覆い被さってきて、首筋に唇を寄せて呟いた。
「俺本当、お前好きだわ」
「えっ!あ、あの!?」
「いい加減シャツ一枚でフラフラすんなよな」
「へ?」
「毎晩誘われてんのかと思ったよ」
「そんなっ」
「お礼は身体で払ってね?奥さん」
「っ!?」
意地悪くニヤリとした透さんが、瞬く間に身体中にキスを落としていく。
深まる夜に、心は甘い気持ちに満ちていった。