強引社長に捕獲されました!?
「ふぁ、んーっ、今何時……?」
「おはよう」
「……おは、あれ?」
起き上がろうとしたのに、カクンと力が抜けてしまった。
っ、そして、身体中が痛い……。
「なんで……?」
「あははっ、ゆずはまだ寝てな」
「私、寝坊っ」
「大丈夫」
透さんはもう会社へ行く時間のようで、ワイシャツの襟を立ててネクタイを結んでいた。
私を落ち着かせるようにポンポンと頭を撫でる。
「俺、またしばらく帰り遅くなるから」
「……私も、仕事したいです」
「え?」
「せめて清掃員くらいは……、ダメですか?」
「えー、なんで?」
「おんぶにだっこは嫌ですよ」
「は?」
「奥さんなら、なおさら。私だって働きたいです」
「……わかった。でも明日からね。どっちみち今日は動けないでしょ?」
「っ!!」
「いってきまーす」
耳もとにキスされると同時に『手加減しなくてゴメンネ』と囁かれた私は、昨晩を思い出して真っ赤になった。
「……いってらっしゃい」
タオルケットを被り寝転がると、お花の香りと透さんの香りにふわっと包み込まれて、しばらく夢見心地でまどろんだ。
ーー翌日。
私は透さんとマンションのエントランスの前に立ち、意気揚々と気合いを入れる。
今日は二人とも出勤だ。
「絶対バレないようにしますね!」
「ロビーで俺を見かけたら、大声で〝あなたー〟って叫んでよ」
「いやいやいやっ!さすがに社長の奥さんが清掃員だと……」
「なんでそんなに引け目を感じるの?」
「だってこの〝私〟ですよ!下手したら株価の大暴落にっ」
「ゆず。俺が選んだのはお前だよ」
「……っ!」
「堂々としてろよ」
透さんは人目も気にせず、私の頭を包み込むように撫でて額にキスを落とす。
「わわ私っ、そろそろ行きますから!」
「はぁ?佐竹が迎えに来るから、一緒に乗ってけよ」
「えっ!?歩いていきますので」
恥ずかしさに煽られ、そそくさと先に行こうとすると、透さんに首根っこを捕まれた。
「はっ、離してーっ」
「おはようございます……、社長。……奥様も。朝からなにをされているのですか?」
「佐竹さん!おはようございます。私は先を急ぎますのでっ」
「だからなんで同じ場所に行くのに別々に行く必要があるんだよ!?」
「社長と出勤する清掃員がどこにいるんですか!」
「ここにいるだろ!言うこと聞かないとクビだぞ!」
「ひどいっ!横暴社長!!」
「なんだと!?この野良猫めっ」
「……社長、奥様。とりあえずご近所の目もありますので乗っていただけますか」
「「えっ」」
歩道のど真ん中で言い争っていた私達を訝しげに見る通行人がちらほら。
仕方なく車に乗り込んだ。
「社長、奥様の立場も考えるべきかと……」
「いーじゃん。別に」
ツンとした透さんは口を尖らせて外を眺めている。
佐竹さんは溜め息をつくと、今度は私に語りかけた。
「奥様、社長は奥様を自慢したいんですよ」
「えぇ!?」
「ご結婚されてからというもの、毎日愛妻弁当を見せびらかされまして」
「こら佐竹!」
「暇さえあれば奥様のことばかりですよ。昨日も仕事中にプレゼントを……」
「佐竹っ!」
透さんが、赤くなってる……。
笑みが溢れて、こっそり彼の手に手を重ねた。
「透さん、ちゃんと仕事しないとダメですよ」
「ふん」
透さんは私が重ねた手を跳ね除け、強引に指を絡ませる。
会社に着くまで、ぎゅっと握り締めたままでいた。
「おはよう」
「……おは、あれ?」
起き上がろうとしたのに、カクンと力が抜けてしまった。
っ、そして、身体中が痛い……。
「なんで……?」
「あははっ、ゆずはまだ寝てな」
「私、寝坊っ」
「大丈夫」
透さんはもう会社へ行く時間のようで、ワイシャツの襟を立ててネクタイを結んでいた。
私を落ち着かせるようにポンポンと頭を撫でる。
「俺、またしばらく帰り遅くなるから」
「……私も、仕事したいです」
「え?」
「せめて清掃員くらいは……、ダメですか?」
「えー、なんで?」
「おんぶにだっこは嫌ですよ」
「は?」
「奥さんなら、なおさら。私だって働きたいです」
「……わかった。でも明日からね。どっちみち今日は動けないでしょ?」
「っ!!」
「いってきまーす」
耳もとにキスされると同時に『手加減しなくてゴメンネ』と囁かれた私は、昨晩を思い出して真っ赤になった。
「……いってらっしゃい」
タオルケットを被り寝転がると、お花の香りと透さんの香りにふわっと包み込まれて、しばらく夢見心地でまどろんだ。
ーー翌日。
私は透さんとマンションのエントランスの前に立ち、意気揚々と気合いを入れる。
今日は二人とも出勤だ。
「絶対バレないようにしますね!」
「ロビーで俺を見かけたら、大声で〝あなたー〟って叫んでよ」
「いやいやいやっ!さすがに社長の奥さんが清掃員だと……」
「なんでそんなに引け目を感じるの?」
「だってこの〝私〟ですよ!下手したら株価の大暴落にっ」
「ゆず。俺が選んだのはお前だよ」
「……っ!」
「堂々としてろよ」
透さんは人目も気にせず、私の頭を包み込むように撫でて額にキスを落とす。
「わわ私っ、そろそろ行きますから!」
「はぁ?佐竹が迎えに来るから、一緒に乗ってけよ」
「えっ!?歩いていきますので」
恥ずかしさに煽られ、そそくさと先に行こうとすると、透さんに首根っこを捕まれた。
「はっ、離してーっ」
「おはようございます……、社長。……奥様も。朝からなにをされているのですか?」
「佐竹さん!おはようございます。私は先を急ぎますのでっ」
「だからなんで同じ場所に行くのに別々に行く必要があるんだよ!?」
「社長と出勤する清掃員がどこにいるんですか!」
「ここにいるだろ!言うこと聞かないとクビだぞ!」
「ひどいっ!横暴社長!!」
「なんだと!?この野良猫めっ」
「……社長、奥様。とりあえずご近所の目もありますので乗っていただけますか」
「「えっ」」
歩道のど真ん中で言い争っていた私達を訝しげに見る通行人がちらほら。
仕方なく車に乗り込んだ。
「社長、奥様の立場も考えるべきかと……」
「いーじゃん。別に」
ツンとした透さんは口を尖らせて外を眺めている。
佐竹さんは溜め息をつくと、今度は私に語りかけた。
「奥様、社長は奥様を自慢したいんですよ」
「えぇ!?」
「ご結婚されてからというもの、毎日愛妻弁当を見せびらかされまして」
「こら佐竹!」
「暇さえあれば奥様のことばかりですよ。昨日も仕事中にプレゼントを……」
「佐竹っ!」
透さんが、赤くなってる……。
笑みが溢れて、こっそり彼の手に手を重ねた。
「透さん、ちゃんと仕事しないとダメですよ」
「ふん」
透さんは私が重ねた手を跳ね除け、強引に指を絡ませる。
会社に着くまで、ぎゅっと握り締めたままでいた。