強引社長に捕獲されました!?
主人のピンチは役立ちます
「社長、おはようございます」
「おはよう」
車から降りた途端、透さんは一斉に注目を浴びる。
そして彼の雰囲気も一瞬で『社長』に変わっていた。
私は頬を染めながら、コソコソと自分の仕事へ向かう。
誰にも見つからないように入り込めたと思ったのだが。
「おばさん!」
私を引き止めたのはまたしても、あの女性社員だった。
人目につかない通路まで連れてこられると、鋭い目つきで睨まれる。
「あなた、いったい社長とどういう関係?」
「う、えっと……」
「どうやって取り入ったか知らないけど、社長の周りうろつかないで!」
「でも……」
「私はね、今度社長とお見合いすることになってるんだから!」
「……え?」
「私のパパの会社も一部上場企業でね、桐谷コーポレーションと手を組みたいのよ」
この人、……なんか違う。
透さんを甘く見てる。
私をバカにするのならともかくだけれど。
ムッとして女性社員へ言い返した。
「……透さんを、好きなわけじゃないんですか?」
「え?」
「会社?それとも肩書きが欲しいんですか?透さんは物じゃないんですよ?」
「なっ!」
「私は、自分勝手で強引だけどほんとは優しい透さんが好き」
「あんた、いい加減に……っ」
相当怒らせてしまったらしく、彼女は私目がけて右手を振りかざした。
ぎゅっと目を瞑り身構えて衝撃を待つ。
しかし、私に起きた衝撃は優しいものだった。
「はい。そこまで」
ーー透さん!?
「社長!!」
「君、見合いは断ったよね?」
「そんなのパパが許すわけ……!」
「そうは言ってもなぁ、俺、結婚してるし」
「なっ、えぇ!?」
「ってわけで短気なお嬢様、ちゃんとパパに伝えておくように」
「ちょっと、待ちなさいよっ!」
「これ以上うちの嫁になにかしたら、潰すからね」
食いつく彼女に淡々と毒を吐く、その冷たい声色に思わずゾクリとした。
透さんにグッと肩を抱き寄せられた私は、社長室までずるずると連行された。
「どこに逃げたのかと思えば……」
「いひゃっ!?」
「誰が自分勝手だと、こら」
「うっ、ごめんなひゃい……」
口の両端を引っ張られて上手く話せない。
全部聞かれてた?……よね。
社長令嬢さん、怒らせたらまずかったんじゃ……。
いやでも、なんか黙っていられなかったし。
「うーっ、はなひて」
「まったくお前は」
透さんはぱっと手を離すと、ほんの少し頬を染める。
「あの人との……、お見合いを断るのに結婚したんですか?」
「まぁ、そんなとこ。一人断ってもウジ虫みたいに湧いてくるからね」
「ふぅん」
「なんだよ。怒るなら怒れば」
「いえ、なんか大変だなって」
「は?」
「透さんは透さんなのに、会社って難しいんですね……」
自由に好きな人とお付き合いしたり、結婚ってできないものなのかな。
「ゆず……」
透さんがなにかを言いかけた時、社長室のドアがノックされた。
佐竹さんが顔を出すと透さんは顔色を変える。
「社長、会長がお見えになりました」
「……了解」
わけもわからず二人の重苦しい雰囲気に圧倒されていると、私の頭にポンと手をのせて透さんが呟いた。
「ゆず、……なにがあっても、俺だけを信じていて」
なぜか悲しそうに微笑む彼に頷くことしかできず、部屋を出ていく後ろ姿を呆然と見送った。
「おはよう」
車から降りた途端、透さんは一斉に注目を浴びる。
そして彼の雰囲気も一瞬で『社長』に変わっていた。
私は頬を染めながら、コソコソと自分の仕事へ向かう。
誰にも見つからないように入り込めたと思ったのだが。
「おばさん!」
私を引き止めたのはまたしても、あの女性社員だった。
人目につかない通路まで連れてこられると、鋭い目つきで睨まれる。
「あなた、いったい社長とどういう関係?」
「う、えっと……」
「どうやって取り入ったか知らないけど、社長の周りうろつかないで!」
「でも……」
「私はね、今度社長とお見合いすることになってるんだから!」
「……え?」
「私のパパの会社も一部上場企業でね、桐谷コーポレーションと手を組みたいのよ」
この人、……なんか違う。
透さんを甘く見てる。
私をバカにするのならともかくだけれど。
ムッとして女性社員へ言い返した。
「……透さんを、好きなわけじゃないんですか?」
「え?」
「会社?それとも肩書きが欲しいんですか?透さんは物じゃないんですよ?」
「なっ!」
「私は、自分勝手で強引だけどほんとは優しい透さんが好き」
「あんた、いい加減に……っ」
相当怒らせてしまったらしく、彼女は私目がけて右手を振りかざした。
ぎゅっと目を瞑り身構えて衝撃を待つ。
しかし、私に起きた衝撃は優しいものだった。
「はい。そこまで」
ーー透さん!?
「社長!!」
「君、見合いは断ったよね?」
「そんなのパパが許すわけ……!」
「そうは言ってもなぁ、俺、結婚してるし」
「なっ、えぇ!?」
「ってわけで短気なお嬢様、ちゃんとパパに伝えておくように」
「ちょっと、待ちなさいよっ!」
「これ以上うちの嫁になにかしたら、潰すからね」
食いつく彼女に淡々と毒を吐く、その冷たい声色に思わずゾクリとした。
透さんにグッと肩を抱き寄せられた私は、社長室までずるずると連行された。
「どこに逃げたのかと思えば……」
「いひゃっ!?」
「誰が自分勝手だと、こら」
「うっ、ごめんなひゃい……」
口の両端を引っ張られて上手く話せない。
全部聞かれてた?……よね。
社長令嬢さん、怒らせたらまずかったんじゃ……。
いやでも、なんか黙っていられなかったし。
「うーっ、はなひて」
「まったくお前は」
透さんはぱっと手を離すと、ほんの少し頬を染める。
「あの人との……、お見合いを断るのに結婚したんですか?」
「まぁ、そんなとこ。一人断ってもウジ虫みたいに湧いてくるからね」
「ふぅん」
「なんだよ。怒るなら怒れば」
「いえ、なんか大変だなって」
「は?」
「透さんは透さんなのに、会社って難しいんですね……」
自由に好きな人とお付き合いしたり、結婚ってできないものなのかな。
「ゆず……」
透さんがなにかを言いかけた時、社長室のドアがノックされた。
佐竹さんが顔を出すと透さんは顔色を変える。
「社長、会長がお見えになりました」
「……了解」
わけもわからず二人の重苦しい雰囲気に圧倒されていると、私の頭にポンと手をのせて透さんが呟いた。
「ゆず、……なにがあっても、俺だけを信じていて」
なぜか悲しそうに微笑む彼に頷くことしかできず、部屋を出ていく後ろ姿を呆然と見送った。