強引社長に捕獲されました!?
「とっ!?」
透さん!!
「こらっ!この脱走猫め」
「……なんで!?」
「通報があった」
「えぇ?誰がそんなこと……」
心当たりを探して目を泳がせると、店長がニコニコしている。
ーーまさかっ!?
「いやぁ、でも家出してきたんだろ?ゆずちゃんみたいな子なら是非うちの息子の嫁に……」
「だーめ!」
「はははっ!社長、今度は飲みに来てくれよ」
透さんは私を担ぎ上げると、店長に手を振り店を出る。
私はそのまま近くに止めてあった車に投げ込まれた。
「きゃっ!?」
「佐竹、捕獲したぞ」
「……捕獲ですか?」
「こいつ猫っぽいだろ」
「はぁ」
「私っ、猫じゃ……」
リンッ
「あっ」
「ははっ、猫じゃん」
「やっ、取ってください」
動くたびに鳴る鈴は、さっき透さんに着けられたもの。
上手く外せないそれは私の首で鳴り響く。
「社長、奥様。そういうことはご自宅で……」
「佐竹さんっ、誤解です!」
佐竹さんはルームミラー越しに鋭い目付きで一瞥すると、私達をマンションの前で降ろした。
もう帰れないと思っていた部屋で、ぽうっと陶酔しかけてハッと気づく。
「だめなんです!透さんがクビになっちゃう!」
「はぁ?」
「株主総会でっ!見つかる前に私は消えないと!」
「……お昼には終わったけど」
「え?」
透さんがテレビをつけると、速報の文字とともに透さんが写っていた。
『桐谷コーポレーションは、医療機器メーカーの買収を発表。
今日午前に行われた株主総会では医療機器メーカー社長を取締役に選任。
なお、桐谷コーポレーション会長は辞職したとのことでーー』
医療機器メーカーの買収って、もしかして!
私が目を丸くすると、透さんは清々しく微笑んだ。
「でも、お父さんはっ!?辞職ってどういう……」
「信用は金で買えないって、わかったんじゃない?」
「え……?」
「少しは考え直したんだと思うよ」
透さんーー。
「ゆずは、怒ってないの?」
「なにを?」
「俺の親父がしたこと……」
私は首を振った。
お父さんも、店長も、きっと透さんのお父さんも、信念があったのだと思う。
それに……。
「透さんは、繋ごうとしてくれたんでしょ?」
「ゆず……」
「ありがとう、です」
「……五千万円の利益とか、お前を買いたいとか言ってごめん。そんな言葉で表せるわけないのにな」
「私こそ、側にいるって言ったのに」
……逃げてしまったから。
躊躇うように肩を竦めると、それを追いかけた透さんの大きな手に、そっと頬を包まれた。
「ほんとに、同情じゃないんですよね……?」
「ばーか。同情で三年も片想いするか」
「えっ!?……っん」
片想いの言葉に飛び跳ねた鼓動は、すぐに彼に掻き消されていく。
吐息の交じり合う距離で透さんが囁いた。
「おかえり」
その一言が、私を確かなものにする。
ポロリと溢れた涙を透さんは舐め取り、力強く私を抱き締め唇を奪う。
やがて白い雲の上で鈴の音が甘く響いた。
透さん!!
「こらっ!この脱走猫め」
「……なんで!?」
「通報があった」
「えぇ?誰がそんなこと……」
心当たりを探して目を泳がせると、店長がニコニコしている。
ーーまさかっ!?
「いやぁ、でも家出してきたんだろ?ゆずちゃんみたいな子なら是非うちの息子の嫁に……」
「だーめ!」
「はははっ!社長、今度は飲みに来てくれよ」
透さんは私を担ぎ上げると、店長に手を振り店を出る。
私はそのまま近くに止めてあった車に投げ込まれた。
「きゃっ!?」
「佐竹、捕獲したぞ」
「……捕獲ですか?」
「こいつ猫っぽいだろ」
「はぁ」
「私っ、猫じゃ……」
リンッ
「あっ」
「ははっ、猫じゃん」
「やっ、取ってください」
動くたびに鳴る鈴は、さっき透さんに着けられたもの。
上手く外せないそれは私の首で鳴り響く。
「社長、奥様。そういうことはご自宅で……」
「佐竹さんっ、誤解です!」
佐竹さんはルームミラー越しに鋭い目付きで一瞥すると、私達をマンションの前で降ろした。
もう帰れないと思っていた部屋で、ぽうっと陶酔しかけてハッと気づく。
「だめなんです!透さんがクビになっちゃう!」
「はぁ?」
「株主総会でっ!見つかる前に私は消えないと!」
「……お昼には終わったけど」
「え?」
透さんがテレビをつけると、速報の文字とともに透さんが写っていた。
『桐谷コーポレーションは、医療機器メーカーの買収を発表。
今日午前に行われた株主総会では医療機器メーカー社長を取締役に選任。
なお、桐谷コーポレーション会長は辞職したとのことでーー』
医療機器メーカーの買収って、もしかして!
私が目を丸くすると、透さんは清々しく微笑んだ。
「でも、お父さんはっ!?辞職ってどういう……」
「信用は金で買えないって、わかったんじゃない?」
「え……?」
「少しは考え直したんだと思うよ」
透さんーー。
「ゆずは、怒ってないの?」
「なにを?」
「俺の親父がしたこと……」
私は首を振った。
お父さんも、店長も、きっと透さんのお父さんも、信念があったのだと思う。
それに……。
「透さんは、繋ごうとしてくれたんでしょ?」
「ゆず……」
「ありがとう、です」
「……五千万円の利益とか、お前を買いたいとか言ってごめん。そんな言葉で表せるわけないのにな」
「私こそ、側にいるって言ったのに」
……逃げてしまったから。
躊躇うように肩を竦めると、それを追いかけた透さんの大きな手に、そっと頬を包まれた。
「ほんとに、同情じゃないんですよね……?」
「ばーか。同情で三年も片想いするか」
「えっ!?……っん」
片想いの言葉に飛び跳ねた鼓動は、すぐに彼に掻き消されていく。
吐息の交じり合う距離で透さんが囁いた。
「おかえり」
その一言が、私を確かなものにする。
ポロリと溢れた涙を透さんは舐め取り、力強く私を抱き締め唇を奪う。
やがて白い雲の上で鈴の音が甘く響いた。