強引社長に捕獲されました!?
ぶかぶかのティーシャツを被り、リビングへ向かってペタペタと歩く。
用意してあった着替えを着てはみたものの……。
社長の服は私が着るとワンピースみたいで、ゆるゆるのズボンを頑張って履かなくても十分だった。
「あのぅ……」
「あぁ、……ゲホッ!」
「大丈夫ですか!?」
私を見た途端驚いたのか、顔を赤く染めた社長が飲んでいたビールで咳き込んだ。
「ゲホッ……、お前な」
「はい?」
「はぁ、まぁいいや。腹減ってるだろ?」
「……はい」
「好きなだけ食べなよ」
社長が指差したのは、カウンターの上にあったあのご馳走。
飛びつきたい衝動を抑えて、私は真剣に確認を取った。
「あの、……これ食べたらお金取られますか?」
「は?」
「それとも最後の晩餐とかですか?」
「……お金取らない。最後の晩餐でもない。だから安心して食べな」
「ほっ、ほん……」
「本当」
「……いただきます」
微笑む社長の様子を伺いながら料理を食べ始める。
一日ぶりの食事がこんなに凄いご馳走だなんて、ほっぺたが落ちそうだ。
「う、うぇーん」
「今度はなんだ!?」
「おいしくてほっぺが痛いです」
「……大丈夫?」
「幸せすぎて、夢をみてるみたい」
「ははっ、それは良かった」
ご馳走にかぶりついていると、社長が笑いながら私の頭をくしゃりと撫でた。
「よく頑張ったな」
「……!」
お父さん、お母さん。
それとも、神様が見ていて私を救ってくれたのでしょうか?
助けてくれた理由も知らないまま、彼に甘えていいのでしょうか?
溢れた涙でしょっぱくなったご馳走を、私は気の済むまで食べた。
食後のコーヒーまで頂いて、ほっとした私は疑問をぶつける。
「社長、どうして助けてくれたんですか?」
「……お前、まだ髪濡れてる」
「え?」
「風邪ひくぞ」
「あ、大丈夫で……、きゃぁ!?」
私の問いに答えずに、社長は唐突に腕を引く。
そしてソファに座らせると、ドライヤーを持ってきた。
「取って食わないから、いちいち悲鳴上げるな」
「す、すみません」
「うん」
「あのっ、自分でやります!」
「……いいよ」
「でもっ」
「いいから」
久しぶりのコンディショナーとドライヤーでふわふわになった髪の毛を、社長は丁寧にとかしてくれた。
お花の良い香りが鼻をくすぐると、ウトウトと睡魔に襲われる。
憧れの社長らしからぬ、少し乱暴な言葉遣いと振る舞いに戸惑うけれど、私に触れる大きな手が心地好い。
強引なのか優しいのか、よくわからないよ。
まだ聞きたいことがたくさんあるのに、瞼はどんどん重くなっていった。
「猫、みたいだな……」
意識の片隅で社長の声が聞こえ、宙に浮いた感覚を覚える。
この意識が再び戻る頃、私はどうなっているのだろう。
全て夢で、跡形もなくなっているかもしれない。
もしそうなら、今だけでいいから、この温もりを感じていたい。
そうして彼の胸にすり寄ると、柔らかな心音がトクンと鳴り響いた。
雲の上に優しく下ろされても、温もりを抱いていたくて、私は思いのままに手を伸ばした。
用意してあった着替えを着てはみたものの……。
社長の服は私が着るとワンピースみたいで、ゆるゆるのズボンを頑張って履かなくても十分だった。
「あのぅ……」
「あぁ、……ゲホッ!」
「大丈夫ですか!?」
私を見た途端驚いたのか、顔を赤く染めた社長が飲んでいたビールで咳き込んだ。
「ゲホッ……、お前な」
「はい?」
「はぁ、まぁいいや。腹減ってるだろ?」
「……はい」
「好きなだけ食べなよ」
社長が指差したのは、カウンターの上にあったあのご馳走。
飛びつきたい衝動を抑えて、私は真剣に確認を取った。
「あの、……これ食べたらお金取られますか?」
「は?」
「それとも最後の晩餐とかですか?」
「……お金取らない。最後の晩餐でもない。だから安心して食べな」
「ほっ、ほん……」
「本当」
「……いただきます」
微笑む社長の様子を伺いながら料理を食べ始める。
一日ぶりの食事がこんなに凄いご馳走だなんて、ほっぺたが落ちそうだ。
「う、うぇーん」
「今度はなんだ!?」
「おいしくてほっぺが痛いです」
「……大丈夫?」
「幸せすぎて、夢をみてるみたい」
「ははっ、それは良かった」
ご馳走にかぶりついていると、社長が笑いながら私の頭をくしゃりと撫でた。
「よく頑張ったな」
「……!」
お父さん、お母さん。
それとも、神様が見ていて私を救ってくれたのでしょうか?
助けてくれた理由も知らないまま、彼に甘えていいのでしょうか?
溢れた涙でしょっぱくなったご馳走を、私は気の済むまで食べた。
食後のコーヒーまで頂いて、ほっとした私は疑問をぶつける。
「社長、どうして助けてくれたんですか?」
「……お前、まだ髪濡れてる」
「え?」
「風邪ひくぞ」
「あ、大丈夫で……、きゃぁ!?」
私の問いに答えずに、社長は唐突に腕を引く。
そしてソファに座らせると、ドライヤーを持ってきた。
「取って食わないから、いちいち悲鳴上げるな」
「す、すみません」
「うん」
「あのっ、自分でやります!」
「……いいよ」
「でもっ」
「いいから」
久しぶりのコンディショナーとドライヤーでふわふわになった髪の毛を、社長は丁寧にとかしてくれた。
お花の良い香りが鼻をくすぐると、ウトウトと睡魔に襲われる。
憧れの社長らしからぬ、少し乱暴な言葉遣いと振る舞いに戸惑うけれど、私に触れる大きな手が心地好い。
強引なのか優しいのか、よくわからないよ。
まだ聞きたいことがたくさんあるのに、瞼はどんどん重くなっていった。
「猫、みたいだな……」
意識の片隅で社長の声が聞こえ、宙に浮いた感覚を覚える。
この意識が再び戻る頃、私はどうなっているのだろう。
全て夢で、跡形もなくなっているかもしれない。
もしそうなら、今だけでいいから、この温もりを感じていたい。
そうして彼の胸にすり寄ると、柔らかな心音がトクンと鳴り響いた。
雲の上に優しく下ろされても、温もりを抱いていたくて、私は思いのままに手を伸ばした。