強引社長に捕獲されました!?
ご主人様を覚えましょう
ピンポーン
私が頷いた途端に、ニヤリと口角を上げた社長。
あれなんか違う人みたい?
なんて、戸惑っていると静寂の中にインターホンが鳴り響いた。
「はい」
「佐竹です」
「あぁ、入ってくれ」
カメラ越しのやり取りの後、リビングから話し声が聞こえて、寝室のドアの隙間からそっと覗き見る。
訪問者は、スーツ姿の男性。
鋭い目つきで怖そうな人だった。
多分、秘書さんだと思う。
清掃のアルバイト中に、社長と一緒にいるところを見たことがある。
「おはようございます社長、お休みのところ申し訳ございません」
鞄からファイルや書類を次々に取り出し、社長に手渡してはなにか説明している。
話の内容は難しくてサッパリわからなかったが、仕事の話が始まった瞬間に社長の雰囲気が変わったのはわかった。
普段はほんの少し気だるげな目をしているのに、心なしかつり上がって、まとう空気もパリッとした。
迂闊に近づくことを許さないような、それがまた惹かれるというか。
噂だと確か二十八歳。
三年前に社長に就任してから会社の業績はうなぎ上りらしい。
動くたびにサラサラ揺れる綺麗な黒髪は、社長の魅力に艶をだしていた。
佐竹さんが帰るのを見計らって寝室から出る。
社長に話しかけようか迷っていたところで、突然私のお腹が鳴った。
ーーぐぅ。
「あっ」
は、恥ずかしい……。
顔を真っ赤にして俯くと、書類を読んでいた社長は簡単に表情を崩す。
「悪い。そういえば腹減ったよな」
「……すみません」
「遠慮しなくていいから。ここはお前の家でもあるんだし、ね?」
「なっ……、っ」
ニヤリと含み笑いをする社長から一歩後ずさる。
やっぱり、一緒に住むってことだよね。
飼ってやるって……、私はペット?
まさか社長にそんな趣味があるとは……。
涼しい顔をした社長は、コップに牛乳を注ぎカウンターに置いた。
それから手際良くパンを焼き、ハムや卵を炒めていく。
たちまち二人分の朝食が完成した。
「わぁ……」
「どうぞ」
「これっ、お金……」
「お金取らないから、ちゃんと食べな」
「……っ、いただきます」
爽やかに微笑まれると、くらくらと目眩がする。
きっと彼にとっては小さなことを、いちいち気にしている私。
ケチな自分自身が恥ずかしくなってきて、頬が火照り牛乳をゴクゴクと飲み干した。
「おいしいっ」
中学校の給食以来の牛乳の味に笑顔を溢すと、社長が優しく頭を撫でた。
驚きつつ、気持ちの良い掌の温かさに浸っていると、社長が満足そうに頷いた。
「子猫ちゃんの警戒心も緩くなったことだし、食べ終わったら少し出かけるか」
「っ社長、私猫じゃ……」
「その社長っていうの、やめてほしいな」
「えっと、じゃあ桐谷さん」
「あー、違う違う」
「へ?」
「ご主人様」
「えぇっ!?」
「って、いうのは冗談で。どこへ行っても必ず透って呼ぶこと。いいね?」
「……はぁ、わかりました」
「俺もゆずって呼ぶからね」
「……はい」
びっくりした。
お願いの一つなのかな?
そんな気がして頷くと、彼はまた私の頭を撫でた。
社長の名前、透さんっていうんだ……。
今まで遥か遠い存在だった人と、名前で呼び合い、同じ家に住むなんて。
これからどうなるのか全くわからないというのに、私の心は思いのほか弾んでいるのだった。
私が頷いた途端に、ニヤリと口角を上げた社長。
あれなんか違う人みたい?
なんて、戸惑っていると静寂の中にインターホンが鳴り響いた。
「はい」
「佐竹です」
「あぁ、入ってくれ」
カメラ越しのやり取りの後、リビングから話し声が聞こえて、寝室のドアの隙間からそっと覗き見る。
訪問者は、スーツ姿の男性。
鋭い目つきで怖そうな人だった。
多分、秘書さんだと思う。
清掃のアルバイト中に、社長と一緒にいるところを見たことがある。
「おはようございます社長、お休みのところ申し訳ございません」
鞄からファイルや書類を次々に取り出し、社長に手渡してはなにか説明している。
話の内容は難しくてサッパリわからなかったが、仕事の話が始まった瞬間に社長の雰囲気が変わったのはわかった。
普段はほんの少し気だるげな目をしているのに、心なしかつり上がって、まとう空気もパリッとした。
迂闊に近づくことを許さないような、それがまた惹かれるというか。
噂だと確か二十八歳。
三年前に社長に就任してから会社の業績はうなぎ上りらしい。
動くたびにサラサラ揺れる綺麗な黒髪は、社長の魅力に艶をだしていた。
佐竹さんが帰るのを見計らって寝室から出る。
社長に話しかけようか迷っていたところで、突然私のお腹が鳴った。
ーーぐぅ。
「あっ」
は、恥ずかしい……。
顔を真っ赤にして俯くと、書類を読んでいた社長は簡単に表情を崩す。
「悪い。そういえば腹減ったよな」
「……すみません」
「遠慮しなくていいから。ここはお前の家でもあるんだし、ね?」
「なっ……、っ」
ニヤリと含み笑いをする社長から一歩後ずさる。
やっぱり、一緒に住むってことだよね。
飼ってやるって……、私はペット?
まさか社長にそんな趣味があるとは……。
涼しい顔をした社長は、コップに牛乳を注ぎカウンターに置いた。
それから手際良くパンを焼き、ハムや卵を炒めていく。
たちまち二人分の朝食が完成した。
「わぁ……」
「どうぞ」
「これっ、お金……」
「お金取らないから、ちゃんと食べな」
「……っ、いただきます」
爽やかに微笑まれると、くらくらと目眩がする。
きっと彼にとっては小さなことを、いちいち気にしている私。
ケチな自分自身が恥ずかしくなってきて、頬が火照り牛乳をゴクゴクと飲み干した。
「おいしいっ」
中学校の給食以来の牛乳の味に笑顔を溢すと、社長が優しく頭を撫でた。
驚きつつ、気持ちの良い掌の温かさに浸っていると、社長が満足そうに頷いた。
「子猫ちゃんの警戒心も緩くなったことだし、食べ終わったら少し出かけるか」
「っ社長、私猫じゃ……」
「その社長っていうの、やめてほしいな」
「えっと、じゃあ桐谷さん」
「あー、違う違う」
「へ?」
「ご主人様」
「えぇっ!?」
「って、いうのは冗談で。どこへ行っても必ず透って呼ぶこと。いいね?」
「……はぁ、わかりました」
「俺もゆずって呼ぶからね」
「……はい」
びっくりした。
お願いの一つなのかな?
そんな気がして頷くと、彼はまた私の頭を撫でた。
社長の名前、透さんっていうんだ……。
今まで遥か遠い存在だった人と、名前で呼び合い、同じ家に住むなんて。
これからどうなるのか全くわからないというのに、私の心は思いのほか弾んでいるのだった。