あなた誰ですか…?
先生は一度
『ゴホン』と咳ばらいし
改まったように頭を下げた。
それから、
先程触っていた何かを指差した。
『これは娘さんの脳内の写真です。
念のためと、MRIで撮影してみたのですが…』
言葉を濁す先生に
君のお母さんが言った。
『あの………む、娘は……娘は大丈夫なんですよねぇ………?』
『はい。手術は成功しました。
愛美さんの身体は大丈夫です。
しかし衝突の衝撃で、頭を強く打った様で……』
「要するに?」
僕はお医者さんの言葉が終わらない内に
直ぐに聞いていた。
僕自身も、意識して言ったのではなく
無意識に聞いていた。
お医者さんは目を逸らし、静かに言った。
『記憶を………
失ってしまったようです………』