【短編】君ガ為、闇ヲ討ツ
「月草…?」
翡翠の光を身に纏い、銀色の髪を靡かせたその人が、私の目の前に立っていた。
彼の額から二対の角が生えている。
「姫様、俺が、俺が捧げますから!!貴女の為ならこの身全て、魂さえも惜しむことはない!だからっ、」
「やめて月草、このままでは貴方が保ちません!!」
今にも彼の渾身の結界が破られそうだ。
バチバチと結界が圧される度に、私たちの周りに炎が現れる。
月草が絞り出すように言葉を紡いだ。
「姫…様、最後…だけでも、俺の…無礼を、お許し下さい」
「月草、お願い、やめ、」
穢れた花霞に魂を捧げてしまえば、彼の魂まで汚れてしまう。
「駄目だよ月草、私が、もう罪を犯した私が、だから月草は、」
上手く言葉にできない。
伝わらない、もどかしい。
嫌だ、どうか穢れないままで。
月草。
幼い頃から私のそばにいてくれた月草。
「花、ずっとお前が好きだった…だから、な?生きて、くれよ」
「嫌だよ月草!!」
手を翳し、力を使うも竹久様と花霞の力には敵わない。
「私も一緒にっ、」
「やめ、」
翡翠の炎の中に飛び込んだ。
月草の傍に。