若の瞳が桜に染まる
ここは近所に住む人が誰も近寄ろうとしない屋敷。

広さなど誰も計算したことはないが、塀の中は学校のグラウンドほどの広さがあると噂されるほど。屋敷自体も相当大きく、戦国時代に建てられた城だと言われても納得できるくらいの存在感がある。

その屋敷の全てをまとめているのが、天祢組四代目組長の天祢辰久。
とにかく筋が通らないことが嫌いな男で、組の者からは恐れられている。
和の心を重んじる一面があり、屋敷もそうだが、服装も普段から和服を好んで着ている。

天祢組の主な活動は裏社会の秩序とバランスを保つこと。
裏社会では警察と手を組んでいる唯一の組織。
そのため、秩序を乱す輩を追放するための多少の違法行為は警察も目を瞑っている。そうやって表も裏も、この社会は程よいバランスで保たれているのだ。

そんな天祢組組長の孫であり、次期組長となるのが天祢我久。本人にその気は無いのだが、周囲は彼を放っておくはずもなく、今も若頭として働く姿に組の全員が期待を寄せている。
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