若の瞳が桜に染まる
「終わったかー?」

縁側から我久の声が聞こえた。その馬鹿みたいに優しい声に、気を張っているこっちがアホらしくなる。

蘭はそんなことを思いながら部屋の中へ入った。

「それは?
中に置くの?」

蘭の持っている鉢に気付いた我久は、不思議そうに尋ねた。

「日和から貰った」

何と言われるだろうと思い、声を潜めて答えた蘭。

「そうか。
大事に育ててやってくれ」

意外にも何のからかいもなく、優しい目を向けられただけだった。
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