若の瞳が桜に染まる
「あぁ」

そう答えながら、なんだか蘭は自分でもよくわからないざわつきを感じていた。

途端に、愛だの幸福だの、日和につられて語ってしまった自分が今になって恥ずかしくなってきた。
これを日和が我久や旬に喋りでもしたらと考えると、いてもたってもいられなくなり、ばっと振り返った。。

そこでは、部屋に上がろうとする日和に我久は手を差し伸ばしていた。泥だらけのその手で、日和は手を重ねることを躊躇ったが、我久は気にせずにその手をとって笑った。

蘭の中でざわつきが大きくなる。

「何の話してたんだ?」

「ん?」

二人の会話が耳に届いてはっとする。

もう手遅れか…。そうヒヤヒヤしながら、日和が答えるのを見守った。
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