若の瞳が桜に染まる
「迷惑だなんて思ったことないよ。

日和が来てくれて毎日楽しいからね。
会社でも家でも日和と会えて、嬉しいんだよ」

「そうなの?」

「うん。そうだよ」

日和の目を見つめ返して、笑って頷いた。どれだけ幸せか、伝わればいいなと思いながら。

「…私も」

ふわりと聞こえたその声。いつもよりも弾んでいるようなその声に、我久は心を持っていかれた。

小指だけが触れていた手。我久は、そっと日和の手に重ね、優しく、ぎゅっと包み込む。
< 118 / 306 >

この作品をシェア

pagetop