若の瞳が桜に染まる
「そうなんですか?でも調べてみたいなー」

それでも楠井は諦めずに引こうとしなかった。

「天祢も何か言ってやれ」

「俺ですか…。

たしかに、記事にしにくいし、すごく危ないんだよ。どういった人たちが関わってるかわからないからね」

自分は何の立場でこんなことを言ってるんだと思いながら、後輩に注意を促す。

「先輩まで…。
でも俺は諦めませんからね!」

結局取材を進めるらしい。
立ち回りの上手い楠井のことだから危ない真似をする心配はあまりない。
むしろ、それが本当に記事にされてしまうことの方が心配だ。どういったルートで我久の正体が晒されるかわからない。

最悪日和にまで飛び火するかと思うと我久はじっとはしていられない。

本当にそういう動きがあるのなら、楠井には悪いけど早めに対処しないとな。

ほんの一瞬、我久の目を影が覆った。
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