若の瞳が桜に染まる
我久や日和の前ではあまり疑いを見せないようにしていた。蘭にはそれでは甘いと睨まれるが、実は蘭よりも日和のことを信じる気がないのは旬だった。

…蘭は、お嬢が裏切り行為をしたらその場で仕留めるなんて言ってたけど、それじゃ遅い。甘いのは蘭の方だ。
お嬢が動く前にこっちから仕掛けないと。

旬は、いつか日和が裏切り行為を起こす前提で見ていた。

意識は日和に集中していた。

数時間後、庭が騒がしいことに気づいたが、組の奴らが何かしているんだろう程度にしか思わなかったのはそのせいで。

だから、何となく見てみた時に、わらわらと強面で厳つい男たちが動き回る中にまざった華奢な女性の存在に目を擦った。

「…お、お嬢?」
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