若の瞳が桜に染まる
いつの間に外に出ていたらしい。目的などはわからないが、何か問題にでもなっていたら大変だと、旬も庭へと出ていった。

若干の緊張感を抱いて向かった旬だったが、そこは騒がしいというよりも、賑やかといった方がしっくりくる状況だった。

庭の警備を任されている何人もの男たちは、なぜか庭のあちこちに散らばった紙を拾い集めていた。

「何してんですか、お嬢?」

旬も足下に落ちていた紙を拾い、日和に渡しつつ聞いた。

「…たくさん資料が部屋から飛んでいった。
皆、拾うの手伝ってくれてるの」

まじか…。

たしかに庭を見渡してみると、植え込みの奥や軒先まで、男たちは皆自主的に探している。
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