若の瞳が桜に染まる
「だったら、我久さんに連れていってもらえばいい。
きっとお嬢と一緒ならあの人、どこまでだって喜んでついていきますから」

「そうかな?
今度頼んでみる」

「どうせなら、今頼んでみたら?」

旬の目の先には、ちょうど門をくぐって帰ってきた我久の姿が見えた。

「おかえり、我久」

「おかえりなさい」

「ただいま。
二人とも外で何やってんだ?」

「植物談義に花を咲かせてたところです。

それと、お嬢が我久さんに言いたいことがあるみたいですよ」

「うん。
今日は、たくさん助けてもらった。
資料が庭に散らばって、拾うのを皆が手伝ってくれたの。
旬兄には、池に落ちそうな所を助けてもらったし…」

予想外に細かく今までの出来事を報告されるのを聞いて、げっと思う。
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