若の瞳が桜に染まる
「お、お嬢、俺のことは報告しなくても良いんじゃないかな…」

「支えたってこと?触れたってこと?」

ぴくりと敏感に反応する我久に、旬は苦笑いしつつも呆れる。

「ほら、こうなる。
我久さん、あれは不可抗力ですから。助けなかったらお嬢は池にドボンですからね!」

「…わかってるよ」

「拗ねないでください」

「ねぇ、我久」

きゅっと、日和は我久の袖口を掴んで見上げた。

「…なに?」

いつもならデレデレした顔をする我久だが、何とも複雑な表情で振り返っていた。

「いつか、私が暮らしてた家に行きたい。森にあって、遠いけど…、我久と一緒に行きたい。行ってくれる?」

無意識的にだろうが、日和は我久のきゅんとくるポイントをしっかり抑えていた。
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