若の瞳が桜に染まる
「あぁ。俺も行ってみたい」

見上げる日和の頭にぽんと手をおいた。

旬は、今さっきまで自分にはキリキリした目を向けられていたというのに、あっという間に優しい目になる主を理不尽に思った。

こんな理不尽な対応を受けたときの対処法は一貫して、からかうだった。

「単純」

「何か言ったか?」

聞こえないくらいの声で言ったつもりの旬だったが、我久はすぐに聞き返してきた。

「いいえ。
ただ、いつまで純情ぶってんだと思っただけです。
もどかしいこっちの身にもなってください。

青春か!」

「…知らん!」

からかいにとてつもなく弱い我久。返ってきたのはそんな、何とも子どもな一言だった。
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