若の瞳が桜に染まる
その部屋は、やはり畳が敷き詰められている和室。余計な物は置いていないシンプルな部屋。
そこに座り、ふーっとため息をひとつついた。

生意気な所はあるいが、帰宅後の旬との会話は我久にとって息抜きとなっていた。
上下関係に敏感なこの世界で、旬のように思ったことをズバズバ言ってくれる人はなかなかいない。

同年代で心を許せる旬の存在は、我久にとって大きなものだった。

だが、そんな旬相手でも日和のことは口に出せなかった。
旬だからこそ、何を言われるかわからないというのもあったかもしれない。

バッサリと可能性が無いなどと暴言を吐かれることを避けたかったのだ。
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