若の瞳が桜に染まる
「ただ、そんなのは誰にだってあるわけで、それが天祢組を裏切るものかと言われると、そうじゃない気がしたんですよ。
お嬢がそこまで高度な裏切りの技術を持ってるとは思えない。

それに、我久さんを大事に思ってるようでしたよ。そこには俺らと重なるものを感じた」

「…そっか」

大事にしていると言われ、嬉しさを隠しきれなくなる我久。だが、すぐに平静を取り戻した。

「これからも日和の護衛を頼むことがあるだろうけど、二人になら安心して任せられそうだ」

「ま、お嬢見とくのも簡単な仕事じゃないですけどね。

ところで我久さんは、お嬢が森で暮らしてたこと知ってたんですか?」

「あいつ森に住んでたのか?野生児かよ」

野生児ではないだろ、と蘭に心のなかでツッコミを入れつつ、日和の過去に関してはまだあまり知ることができていないなと思った。
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