若の瞳が桜に染まる
「柊さん、あんまり喋らない人だからどうなることかと思ったけど、実はすごい人だったんだねー。

植物扱わせたら天才的って言うか、本当才能だよね、これ。社長も良い人材見つけたなー」

少し離れたデスクから聞こえてくる会話。
日和に関する話だ、と即座に反応した我久は、顔はパソコンに向けたままで意識は完全に彼女たちの会話へ飛ばした。

「で、その柊さんは?」

「きっとまた屋上ですよ。
この雑誌に掲載した珍しい花っていうのも、屋上で育ててるらしいですよ」

「屋上で?そういや、花壇とかが元々置いてあったんだっけ?けどあそこ、荒れ果ててたよね?昔一回だけ行ったことあるけど、雑草とか凄くてすっごい萎えたの覚えてる」

「作り直したんじゃないですか?見てみたいけど、屋上まで階段なのが面倒ですね」

「まだ若いでしょ!」

彼女は屋上にいる。
賑やかな会話から、日和に繋がる情報をゲットでき、それだけで嬉しくなってしまうのが天祢我久という男だ。
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