若の瞳が桜に染まる
運が悪ければ長期の作戦となるが、そのぶん成功すれば可能性は未知となるもの。

その内容は、我久と日和の家を突き止め、休日に周辺をうろつき、偶然を装って声をかけるというもの。
会うことさえできれば、お茶に誘うこともできるし、家に行くこともできるかもしれないと考えたのだった。

ところが問題は、家を突き止める最初の段階で発生した。

周囲から怪しまれないようにと、香織は日和の後を、楠井は我久の後を付けていた。

最後まで尾行するのは何ら大変なことではなかった。
だが、互いの家を報告し合っている途中で、何かがおかしいことに気がついた。

…どうやら同じ場所を伝え合っている。

近所や似た特徴の家なんてものじゃなかった。
場所も見た目も何もかもが一致していた。

香織は最初、どうしてこんなことになっているのかさっぱりわからなかった。
なぜ同じ場所に辿り着いてしまっているのか。

私はちゃんと尾行できた。
間違ってなんかない。

だけど正隆も同じように言っている。

だとすると、この現象の理由は…。

考えたくないけど、その理由なんて一つしかなかった。

…二人は同じ屋敷に住んでいる。
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