若の瞳が桜に染まる
「全然人通りないのね。
私たちとしてはありがたいけど。

ところでさ。
もしかしてなんだけど、あの屋敷って……」

はじめの頃は何とも思っていなかったが、こうやって屋敷を観察してみると、セキュリティが厳重そうに見える。高い塀や物々しい雰囲気が漂っていたりと、その様子から香織は、ここがただの屋敷ではないと感じ取っていた。

「うん。俺もあの屋敷について一つ言いたいことがある。

まさかとは思うけど…」

その怪しい違和感は楠井にもあったようだ。

「暴力団?」

二人の息がぴったり揃った。揃ってしまったことに、焦りの色を見せる。
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