若の瞳が桜に染まる
次は知り得た情報を上手く活用したい所だが、何のきっかけも無しに屋上に行くことは躊躇われ、勇気が湧いてこなかった。

「はぁ…、ダメなやつ…」

そう、思わず心の声が出てしまった。

「おぉ、どうした後輩?新入社員のポテンシャルの高さに打ちのめされているのか?
それなら大丈夫。俺も同じだから」

ぼそりと吐いた呟きにいち早く反応し、椅子を滑らせて来たのは上司の吉田。
彼は、ウォルクに配属になった楠井の教育係となったが、コミュニケーション能力に長けた楠井に早くも追い抜かれようとしていた。
その心情を共感できる相手を探していたのだ。
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