若の瞳が桜に染まる
「そんなに怒るなって。

先輩と何もないなら、俺はまだ日和のこと諦めないし。
香織だってそうだろ?もし二人が付き合ってたら、どうすることもできないよ」

追いかけてきた楠井に真っ当なことを告げられ、冷めていくのがわかった。苛立ちも、ピークを超えると冷静になるらしい。

だから何も思わずに、楠井の言葉を真っ向から否定できた。

「そんなの、どうだってできるわよ」

「…略奪宣言かよ」

他にも何か言いたげな楠井を無視して、香織は塀の周りを見て回る。
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