若の瞳が桜に染まる
こそこそと電柱の影に身を隠すのをやめ、周囲に人がいないのを良いことに堂々と中を探ろうとする二人。

しかし、どこを見てみても塀は高く、覗けそうな場所などどこにもなかった。

「どうすんの?
チャイムでも押して呼び出す?」

「そんなことしないわよ。

あ、門の隙間からなら中が見えそう」

香織が目をつけたのは、縦にはいったちょっとした隙間。

片目で恐る恐る覗き込んでみると、庭の様子が見えた。
石畳がずっと奥の玄関まで続いている。
他にも見たかったが、小さな隙間からではそれが限界だった。

がっかりして姿勢を戻そうとしたその時、すぐ後ろで声がした。

「おい兄ちゃんたち。そこで何やってんだ?」

背後からのドスのきいた声に、二人の背中はビクついた。

嫌な予感一杯で振り返ってみると、そこには期待を裏切らないほどの真っ黒なスーツを着た大柄な男が立っていた。目付きは鋭く睨まれるとそれだけで震えあがってしまうほど。

二人は瞬時に思った。

本当にこの屋敷は、危ない組織のものなのかもしれないと。
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