若の瞳が桜に染まる
「こいつらが黙ってる保証なんてどこにもないだろ。

女の方はともかく、こっちの男はすぐ言うね。
俺の先輩、若頭なんだぜとか自慢気にな!」

「そこまで馬鹿じゃないよ!
そんなこと言ったら身の危険があるのはわかってるし、俺だって記者だ。秘密くらいは守れる」

そう言った楠井の目には熱がこもっていて、蘭相手でも一歩も引かなかった。

本当に、続けていいのだろうか。

どうしようか答えを出しかねて隣を見ると、日和もこちらを見ていた。

「良かったね」

隣から日和からそう言われ、はっと気がついた。どうやら、嬉しそうな表情が漏れていたらしい。

思わず口元を手で覆う。

「二人の関係をはっきり聞けたし、見られたし良かったですよ。

これで、未練なく次に進めそうです、俺は。香織はどうなのか知らないけど」

「うるさい」

仲が良いのか悪いのか、香織に睨まれる楠井を見てくすっと笑った。
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