若の瞳が桜に染まる
ため息をついた香織は、さらりと髪をなびかせた。

「まぁ、邪魔をする気はないわ。ヒヨリンがずっと天祢さんのこと好きならね」

「…たぶん、ずっと好きだと思う」

永遠なんて誓わなかった。これからもずっと好きだと断言しなかったところに、現実と本気が見えた。

「そう。
じゃ、また会社でね」

「うん」

別れを告げて、香織と楠井は再び言い争いを繰り広げながら屋敷を出ていった。
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