若の瞳が桜に染まる
「わかってるよ。
幸せにばかり浸っているつもりはない」

「わー、男前な台詞。惚れそー」

旬ににやにやとからかわれて、かっと顔が赤くなる。
真面目に返した自分が恥ずかしくなった。

だが、たしかにどちらの件も気に留めておかなければならない最重要事項だ。

最近、警察にも不穏な動きがあるという噂を耳にしていた。天祢組を裏切るために、水面下で動き出しているのかもしれない。

こちらとしてもただ見ている訳ではないが、そこにきて茶島会とのゴタゴタだ。

どちらも一筋縄ではいきそうにないというのが、本当のところだ。

「しっかりしないと」

誰にも聞こえないような声で呟いた我久は、天祢組という大きな組織の重さを感じていた。
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