若の瞳が桜に染まる
その日、我久の労働時間は15時間を超えようとしていた。一人孤独に残業をするオフィスで、ひてすらにひとつの記事を書き上げを目指す。

テーマも何もないままに急に記事を一つまとめろと言いつけられ、愕然としたのは帰宅時刻の少し前。

結局断りきれずに引き受けてしまった。

それから、過去のボツになったネタを引っ張り出してきて、適当な言葉を並べていく。

絶望的に思われたが、何とか形になってきた。早く終わらせることを目標として書いた記事。
信憑性を高めようなんて気のさらさらない、中学生すら食いつくかないかもしれない記事だが、我久はそれなりに満足していた。

それが今から2時間前のこと。

ようやくあと数行で出来上がるというときに、プツンとオフィス内の全ての電気が落ちた。

あー！と声をあげて、真っ暗になったパソコン画面を掴むも、そんなのでデータは待ってくれない。数分後、電気が戻った頃には記事の欠片もそこには残っていなかった。

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