若の瞳が桜に染まる
後ろを振り返ってみると、早く行けということなのだろうか、吉田がしっしっと手を払っている。

「なんでこんなことに…」

我久としては心の準備も何も無い状態。きっかけを作ってもらったことはありがたいが、できることなら一週間程前に頼まれておいて気持ちを調整していきたかった。

今から日和と対面すると考えただけで、心臓が口から飛び出して来そうな思いなのだ。

「あれ、天祢さん?こんなところで何してるんですか?」

「うわっ…」

誰もいないと思っていた廊下で背中越しに声をかけられ、間抜けにも驚いた声が出た我久。

声からして女性であることはわかったが、振り返って見えた彼女の姿にまた驚いた。
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