若の瞳が桜に染まる
屋敷についた我久は、すでに殺気だった雰囲気を感じた。

「若、組長がお呼びです」

声をかけてきたのは40代後半の男。蘭の父親である二葉だった。
幹部である彼がいるということが、事の重大さを物語っていた。

「来たか、我久。
お前には出雲荘に行ってもらう」

「…なんで……」

出雲荘とは、屋敷からは離れた場所にある小さな古い旅館。天祢組の息がかかった場所とはいえ、そこが茶島会に狙われるなんてことは無に等しい。
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