若の瞳が桜に染まる
日和は襖に手をかけたまま何も言わない。

部屋に残ってくれるということだろうかと解釈した我久だったが、ポトリと畳の上に落ちた滴に気付き、全身から血の気が引いた。

ようやく日和が涙を流していることを知った。

あまりのことに、どうしていいかわからず腕からは力が抜けた落ちた。

日和はその隙をついて、襖を開けて部屋の外へと飛び出した。

我久はそんな日和を追いかける気力も無く、呆然とその場に立ち尽くした。
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