若の瞳が桜に染まる
その異様な空気を察して、旬と蘭は黙って顔を見合わせた。

「さっきお嬢とすれ違いましたけど…。
俺、追いかけてきましょうか？」

「いや…。

…俺が行く」

自分で行かなきゃ意味がないと奮い立った我久は、日和を探しにいった。

そんなに広くない旅館。少し歩けばすぐに見つけることができた。

日和は廊下の突き当たりで、ぼんやりと窓の外を眺めていた。

こっそり近づこうとした我久だが、老朽化の進んだ廊下は一歩足を踏み出すとみしりと音を立てた。

その音に振り返った日和は、気まずそうな顔をしてその場から離れようとした。

だが、廊下の突き当たりなため逃げようにも逃げられない。
焦った日和は、すぐ横に見つけた扉を開いて中に駆け込んだ。
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